1990年モデル、ポルシェ964C4、走らせている時はエンジン音とメカニカルノイズ、タイヤの接地音などで十分。そもそも昨今の車の様に静かな車内ではない。サーキット走行時はフルフェイスヘルメット着用でも走行ノイズで満たされる。ただこれは走行状態の情報でもある。長距離旅行で高速道路を行く時は、速度を上げれば上げるほど空気を切りさく音以外、いがいに静かなのもこの車の本来の持ち味かもしれない。
最近、めったに聞く事のないカーラジオ(Sony製のカセットデッキ付き、時代を感じさせるが)にiPodを繋ぎ音出しするが、後ろの方からガサガサと妙な音が出ている。自宅車庫に戻った後、リアスピーカーを外してみるとウーファーのウレタンエッジが完全に劣化、指で触るとボロボロと崩れ落ちる。無理もない30年間、下からエンジンの熱にさらされ、上からは日差しに晒されてきた訳だから。(上のアイキャッチ画像、左側が完全劣化したウレタンエッジで右側はエッジを取り去った状態)
外したリアスピーカーはBlaupunkt製の2ウエイ、ウーファー(フルレンジ?)は約10センチで小さなコイルとコンデンサーのLCネットワークを介してツィーターが繋がっている。テストで音出しするとツィーターは問題なし。ホームオーディオでもそうだが高音帯域用のツィーターはドーム型やホーン型が多く小型で素材的にも比較的劣化しにくい物が多いと思う。市販で車載用のスピーカーユニットが色々売られているので交換してしまうのが早く簡単で一般的な方法と思うが、自宅で使っているスピーカーでもエッジ張替えを経験しているので、ここはオリジナルBlaupunktのまま、外観も変えたくないのでエッジ張替作業することにした。
スピーカーユニット、なかでもフルレンジやウーファーは一般的にはコーン型で、素材にもよるがエッジやダンパーの経年劣化が起こるので修理やメンテナンスパーツ販売のショップがある。よく利用するのが FunTeqファンテックhttp://www.funteq.com/index.htm。今回はAR70型番のラバーエッジを二枚購入(一枚約1,500円)ウレタンタイプもあるが耐久性の高いラバーエッジで張り替えた。専用の接着ボンドと細いハケ筆は以前購入したものを使い、劣化した古いウレタンをきれいに剥がすのに細いカッターナイフがあれば問題なし。
上の写真はリアスピーカーを外した車内後部で中央に置いてあるスピーカーメッシュカバーは周囲が樹脂製で上から被せてあるだけなので薄いヘラもしくはマイナスドライバーを差し込み浮かせるようにしながら外した。後は四本のタッピングネジを外せばユニットごと外れるので意外と簡単。下の写真はエッジ張替えたユニットをリアに収めた状態でメッシュカバーを被せれば作業終了。
リアスピーカーを修理したところで気になったのは前方左右のドアに取付けられたスピーカーの状態。現状では音に問題ないと感じられるが(30年も経過しているのはリヤスピーカーと同じ)念のため状態チェックでドアの内装内張を外してみた。順序良く各所ネジを外していけば何処も破損なくはずすことが可能。昨今の車の様なチャチな樹脂製のピンではなく作業性は良い。
ドアフレーム側にマウントされているのは16センチ程のSony製コアキシャルユニット、ウファーコーン紙のエッジは布に樹脂含浸したような素材でやや劣化と硬化が感じられるが破損はしていない。フレーム周りのウレタンもまだ弾力性があった。ユニット自体を外したので軽く清掃して鉄板製のドアパネル内に厚めの梳毛フエルト貼り多少の吸音とデッドニング処理をした。外した内装パネル側にネジどめしてあるツィーターユニットはメーカー不明、小型のコーンタイプで聴感上異常なしと感じたので接続端子を磨きしっかり締めて再接続作業のみ。
一応音がまともに出るようになると気になるのが現在装備されているSony製1 DINサイズのヘッドユニット。現在は裏側にAUX端子があるので、そこにステレオミニプラグを結線して隣のグローブボックスに出しiPodを接続できるようにしたが、なにせ30年前のユニット、カセットデッキ付きでUSB接続やブルーツゥース、SDカードスロットなど今時のデバイス接続は当然の事ながら出来ない。音質そのものは決して悪くはないし、デザイン的にも比較的シンプルで964のダッシュボードにオレンジのイルミネーションカラーで違和感なく収まっている。さらにしっかりしたハンドルを上手く組み込んであり車から離れる時は盗難防止のため本体を引き抜き外せるようになっている。
1 DINサイズのカーオーディオヘッドユニットで今時の機能を持つ機種を色々探してみたが、国産は総崩れ、まず前面のデザインが酷い状態で昨今の国産車フロントデザインの如くギラギラ、ピカピカで妙に装飾過多。964のダッシュボードでは浮き上がってしまい昔風に言えば”チンドン屋”なのだ。国内では1 DINサイズのカーオーディオヘッドユニットはもう見捨てられた存在かもしれない。海外ではまだシンプルで落ち着いた前面デザインの物があるようなので、探してみたいと思っている。